コリント人への手紙第二1章

パウロの手紙は、当時の手紙の書き方に沿ったものであるが、ここでは、コリントの教会で問題視されるようになっていた自らの使徒性を強調し、さらに、コリントの問題を解決するために遣わされたテモテの名を加えている。

既に述べたことであるが、この手紙は、コリント教会との衝突が解決し、和解ムードになった際に書かれた最後のものである。パウロは、コリントに宛ててエペソから4つの手紙を書いているが、今日聖書に収められ私たちが読むことができるものは、二番目に書かれたコリント人への手紙第一と、最後に書かれたこのコリント人への手紙第二のみである。最初に書かれた「厳しい手紙」と、パウロがエペソ滞在中に直接訪問し関係が益々悪化し、決裂した後に書かれた「涙の手紙」はもはや失われており読むことはできない。最初の手紙とともにテモテを仲介者として遣わして以来、パウロは心を砕き祈り、時間を割き、手を尽くして教会の問題解決に関わり続け、まさに神のあわれみによってその問題が解決に導かれていった時に、パウロは、再び、ふりだしに戻って、テモテを送ったころの自分の信仰について分かち合おうとする。

つまりパウロが、3節より展開していることは、神への感謝であり、宣教における神の慰めを思うことであり、様々な問題で、痛み、緩み切ったコリントの人々を再び、宣教の最前線へと導きだそうとしている。実際、パウロは、コリントの人々と宣教の苦しみについて分かち合おうとしている。慈愛は、受けるに値しない者に注がれる神の恵みを意味する。慰めは、単なる一時しのぎの慰めではなく、耐えがたき時を耐え抜く力である。パウロは、神の慈愛と慰めを得ながら、コリント教会との衝突の苦しい時を乗り越えた、と言っているわけではない。むしろ、アジア宣教の苦しみを示唆する(8,9節)。パウロは何もそのことについて語ろうとはしないが、実際、コリント教会と衝突していた間、エペソで宣教を果敢に進めていたのみならず、実は投獄され獣と戦ったり(1コリント15:32)、アルテミス神殿の暴動に巻き込まれたり、と想像を絶する宣教の苦難の中に置かれていた。そうした中でコリント教会の牧会の労が報われて、コリント教会の内部的な問題が整理され、宣教の使命に立ち戻る準備ができた今、パウロは困難な宣教の前進のために協力を求め、その苦労を共にするように呼び掛けている(11節)。

大事なのは、私たちの頑張りではない。たとい自分の無力さを痛いほど思わされ「死を覚悟する」(8,9節)状況に追い詰められたとしても、神の慈愛と慰めに目を向け神に委ねるなら、そこには可能性がある(詩篇116:8)。自分ではない、死者をよみがえさせてくださる神は、私たちの思いを超えた働きを導いてくださるのだ。そして、そのキリストの慈愛と慰めの豊かさを味わい知るならば、その経験を人に分かち合うことができる(4節)。確かに、私たちが人の助けとなるのは、私たち自身が、神の力に助けられてこそである。「肉的な知恵によらず、神の恵みによって行動する」ことがパウロの信条であった。

さて、15節からパウロは、コリント訪問を遅らせた理由について語り始める。おそらくパウロを軽率で、前言をいとも簡単に翻す、いい加減な男だ(17節)と非難する者がいたのだろう。問題は解決したようであっても、実際火種は残るものである。人が人を誤解し始めてしまうと、誤解を解きほぐすことは非常に難しい。一旦物事を思い込んだ人の心を変えることは至難の業である。しかし、パウロは、そんなことには動じなかった。パウロは、自分はそんな男ではない、むしろ、行くと言いながら行かなかったのは、前回の訪問が決裂し、散々な結果であったので、お互いにとって良い時を見計らっていただけだ、と(23節)理由を述べている。そして、よく考えずに「はい」とも「いいえ」とも返事をしてしまう、いい加減な男の語ることそのものが信用でるのか、とする声に、自分が語ったことばが「はい」であると同時に「いいえ」になるような揺らぎはない。まして、神の子キリストについてもそうであるし(19節)、神は、やると語ったことを約束どおり果たされたのだ(20節)、というわけである。

パウロとしては、まだ火種の消え去らぬ状況にあるコリントを訪れて、再び厳しい口調で争うことは避けたかったところであろう。パウロの関心はコリントの教会を支配することではなく、健康的に立て直すことであった。そのための協力者としてあることをこそ、パウロはモットーとした。主の教会を建て上げる、真実なしもべとして自らの動機の純粋さに注意したパウロの姿に教えられる(12節)。そして、私たちの信頼性が、私たちの語ることの信頼性に影響を与えるとしたら、やはり私たちは常に、「誠実と真実なる人格の成熟」を目指さなくてはならない。

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