ヨブ記25章

25章

<要約>

おはようございます。語りつくした感のある、ビルダデの最後の応酬です。しかし、そこには、人間にとっての真理があると同時に、さらにキリストにある新約的光に照らすならば、大きな恵みを覚えるべき基本的認識があると言えるでしょう。私たちは、小さき者でありながら、神の恵みに与っているのです。今日も、主の恵みを信頼し、支えられる豊かな一日であるように祈ります。主の平安

1.25章のテキスト上のこと

シュアハ人ビルダデが答えて言った。ヨブの友最後の反論である。実に短い。もう言っても無駄だと言わんばかりである。ビルダデは、神の卓越した主権について語り(2-3節)、その神の前に、人間が正しくありえないことを語る(4-6節)。特に新しさはなく、だめ押しのように、短く、悔い改めを迫っている。

しかしこの章を、ヨブのことばと取る説もある。それはヘブル語の写本に、「シュアハ人ビルダデ」を「ヨブ」としているものがあり、25章もヨブのことばと考えることができるからだ。そうなれば、友人たちの発言は、22章のエリファズまでということになる。実際、これまでエリファズ、ヨブ、ビルダデ、ヨブ、ツォファル、ヨブという順で第一ラウンド(4-14章)、第二ラウンド(15-21章)と続いてきて、第三ラウンドは、エリファズ(22章)やビルダデ(25章)で終わるのは、構成上いささか落ち着きがない。だから第三ラウンド内のヨブの最後の弁論の中にツォファルの反論(27:13-23)があると考える者もいる。写本上の揺れはあるとしても、形式を敢えて整えることなく、伝統的に、25章のビルダデのことばで終わりとした方が、友が語り尽くし、もう繰り返す他ない議論の行き詰まりを、緊迫感をもって伝えている。

ただ、どうやらヨブと三人の友の論点はずれている。ヨブは、ビルダデに対抗しているわけではない。今やヨブは、三人の友よりも、神に心を向けている。そして自らの問題意識、つまり神の民に対する「神の操作」の意味を問うている。実際ヨブは、自分が完全に潔白であると言うよりも、彼らが邪推するような罪はないと語るだけで、同時に神に対しては、その沈黙に意義を申し立てている。ヨブは、神に向かって抗議しているのである。

2.神の前に小さき人間を覚えよ

そこでビルダデは言う。あなたは、わかっているのだろうか。一体誰に向かって、あなたは語っているのか、と。「神はその高い所で平和をつくる」というのは、神々の闘争があるという神話的な内容を語っていると説明されることもあるがそうではない。神は何物にも影響されることはない、つまり神と人間の隔絶性、神の超越性を語っている。また3節「軍勢」と訳された語は、イザヤ書40:26で「万象」と訳された言葉と同じで、日、月、星といった天体のことと考えられている。私たちは、神がお作りになったそれらに照らされている。つまり人類が、至高なる神の支配と御業のもとにある、誰もそのまなざしを逃れる者はない、ということである。

これは、既にエリファズが第一回目の弁論でも語ったことである(4:17)。人は神の光に照らされて正しくありうるはずがない、実に罪の内に生まれた者が、どうして清くありうるか(4節)。私たち取るに足りない、人間、いや、神に比べたらウジ虫に過ぎないような生き物ではないか、という(5,6節)。

人間が神に造られた者であり、卑しい者である、そこをしっかり意識し、そのような神の存在を覚えて歩むことが私たちを遜らせていくのであるし、私たちの歩みを、慎ましいものにする。

だが、私たちはしばしば神を崇めながら、神の前に不遜であったりする。神を認めているようでありながら認めていない日々を過ごしている。もし、私たちが世界の主権者の神の前に立ったとしたら、今と同じ生活を続けられるであろうかどうか、そのような振り返りをしてみてもよいのではないか。

ともあれ、これがビルダデのことばであるとするなら、ヨブにとっては慰めにも、助言にもならないことばではあるが、言っていることに間違いはない。ただ、これを新約的光に照らすならば、パウロの「私たちは、この宝を土の器の中に入れています。それは、この測り知れない力が神のものであって、私たちから出たものではないことが明らかになるためです」(2コリント4:7)。と言う言葉が思い出される。実に、私たちは土の器に過ぎないが、今やキリストによって、神が共にいてくださる恵みがある。私たちはウジ虫に過ぎないが、これを神の子としてくださる神の恵み豊かさがある。神の主権の故にではなく、神の愛の故にこそ、遜り、従い、愛する人生がある。神の栄光をあらわすためにある自分の歩みを覚えて歩ませていただこう。

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