使徒の働き2章

キリスト者は、聖霊の働きを待ち望む者である(1章)。そしてキリスト者は、聖霊の働きを味わう者である(2章)。五旬節の日、主は約束の聖霊を下された。

ユダヤ人の三大巡礼祭りに、過越の祭(種を入れないパンの祭)、七週の祭(五旬節、刈り入れの祭り、初穂の日、ペンテコステ)、仮庵の祭(収穫祭)がある。過越の祭は、イスラエルの民がモーセに率いられてエジプトを脱出した記念として行われた。その翌日、大麦の初穂の束をささげる日から七週目、つまり五十日目に祝われた祭りが、「七週の祭り」または「五旬節」である(レビ記23:15)。ペンテコステという呼び名は、ペンテーコンタ・ヘーメラスというギリシャ語の読みにちなんでいる。この日が、キリスト者にとって重要になったのは、この日が日曜日にあたり、この日に神の御霊が教会に下り、教会の活動が本格的に始まったからである。ユダヤ人には穀物感謝、奴隷からの解放記念日として祝われたこの日は、キリスト者には、イエスが約束した聖霊が与えられた聖霊降臨日、そして教会の誕生日としてお祝いされる。

さて、この日、彼らは一つ所に、一つになって集まっていた。それはイエスに祈られ(ヨハネ17:20-21)、導かれた一致であった。というのも、ヨハネの福音書21章でも見たように、ペテロを初め、彼らには、宣教への大いなる原動力が必要とされていた。彼らが神の使命に生きようとするのなら、復活の主にお会いするのみならず、主が約束されたとおりの聖霊が内に与えられる経験を経ずして、一歩も先に進めないと思わされたのであろう。確かに、宣教は、人間的な思いのみで続くものではない。それは、神の導きを、上からの賜物を必要とする働きである。彼らは集まり合った。

すると、時が熟して聖霊が下された。聖霊の働きは、ペンテコステ以前にも存在し、天地創造のみならず(創世1:1-2)、旧約の歴史の中で(士師6:34、1サムエル16:13)。またイエスキリストの生涯と働きの中にもみられる(ルカ1:30-37;4:1,14;使徒10:38)。しかしながら、これまでのそうした働きと、ペンテコステの聖霊の降臨とには大きな違いがある。一つは聖霊は、単に下ったのではなく、人々に内住した。そして、聖霊の臨在は、一時的ではなく、永続的なものとなった(ヨハネ14:16-17)。また聖霊は、父と子より派遣され、キリストを証する働きを担った。さらに聖霊は、モーセ、エリヤ、ダビデなど、ごくわずかな特定の人にではなく、ヨエルが語るように、ごく普通の老若男女に与えられた。しかも教会全体に下されている。そして、最後にイエスの約束の実現としてそれは起こった(33)。つまり、イエスの約束の時が満ちたことへの結果として起こった。聖霊は皆が心を合わせて祈り、待ち望んだことによって下ったわけではない。それは、祈りの応えというよりも約束の成就として起こった。だからペンテコステは、繰り返されることのない歴史に一度きりの出来事なのである。ここは勘違いしてはならないところであろう。イエスの十字架が最初で最後の事件であったように、ペンテコステも最初で最後の出来事である。教会は、聖霊に満たされる新しい経験をすることがある。また忍耐強い祈りは、霊的な力のために必要不可欠な要素である。しかし私たちは、キリストの十字架と同様にペンテコステを二度求めることはできない。ペンテコステ的経験は起こり得ても、ペンテコステは繰り返されることはない。

風は神の命の象徴である(ヨハネ3:8、エゼキエル37:1-10)。神は確かに、ご自身の命を弟子たちに注ぎ、御霊によって生きる者とした。また、炎と光は神の栄光の象徴である。モーセの柴しかり、変貌の光しかりである。神の輝かしい臨在がそれぞれの信仰者に現されたことを意味している。他国のことばは、内住の御霊の奇跡であって、証を目的とする。老若男女問わず、聖霊の油注ぎを受けた者は、皆神を讃え預言した。ここで起こった異言も、外国語である。それは、明瞭に理解されることばとして上から与えられた。続くペテロの説教は、イエスの教え(ヨハネ16:8-14)に基づいて、イエスの受肉(22b節)生涯(22c節)、十字架(23節)、復活(24節)、昇天(33節)、統御(36節)に触れ、イエスが確かに私たちの救い主であることを証する。大切なのは、神は確かに生きておられ、私たちを愛する証としてイエスの十字架を導かれたことである。イエスの十字架に、私たちが神に近づくことのできる恵みがある。聖霊降臨日はまさに、証されたイエスの十字架と復活の恵みを覚える日であった。

そして同時に、キリスト教会はその初めから、多文化、他民族、多国籍的指向であった。それはユダヤ人から始まったものであることに間違いないが、全人類を視野に入れた信仰であった。日本人の枠を超えた、教会形成を心がけるべき、ポイントがここにある。

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