出エジプト記33章

1.イスラエルの悔い改め(33:1-6)
 モーセのとりなしによって神の怒りはとどめられた。「乳と蜜の流れる」約束の地を与える契約も確認された。しかし神は「わたしは、あなたがたのうちにあっては上らない」と明言される。しかしそれは、イスラエルを見捨てたというわけではなく、保護することが目的であった。「あなたがたはうなじを固くする民なので、わたしが途中であなたがたを断ち滅ぼしてしまなわいようにするため」だという。それは、明らかに不吉な知らせであった。保護することが目的とはいえ、結局捨て去るのではないか。イスラエルの民は不安に思ったであろう。そのような民にモーセは飾り物を外し、悔い改めを求めた。イスラエルの民が素直に従った。
2.モーセのさらなるとりなし(33:7-23)
さてこの時点でまだ幕屋は造られていなかったから、ここで言う天幕は、幕屋とは別ものである。となると11節の「幕屋」という新改訳第三版の訳語は、不適切かもしれない(新改訳2017では「天幕」と修正された)ともあれ、神はこの天幕で、モーセと語り合い、イスラエルの民は、自分たちの天幕でこの様子を見守り、伏し拝んだ。モーセが神に従ったので、神はモーセと友と語るように親しく語られたとされる。イエスは「あなたがたはわたしの友です。わたしはもはや、あなたがたをしもべとは呼びません。」(ヨハネ7:14,15)と語っているが、聖書の神は、天地創造の神とされるし、いと高き神ともされるが、わたしたちの友と呼ばれることを恥としない。実に不思議な存在である。
 神はモーセに、「わたしの臨在が共に行き、あなたを休ませる」(14節)と語られた。つまり、神はイスラエルの民と距離を置かれるが、決して捨て去ることはないこと、初めの約束を最後まで守られることを繰り返すのである。しかしモーセは言う。「私とあなたの民が、みこころにかなっていることは、いったい何によって知られるのでしょう。それは、あなたが私たちと一緒に行き、私とあなたの民が地上の全ての民と異なり、特別に扱われることによるのではないでしょうか」(16節)と。確かにイスラエルの民が、エジプトの奴隷状態から救い出してくださった神を忘れて、金の子牛を造り戯れた状況からすれば、モーセは、愕然とし、自分たちがこれからも神に導かれるということへの確信を失う思いでいたであろう。実際、私たちが神に罪を犯す時、あるいは犯してしまったことを思う時に、神の祝福を確信するのは難しい。不幸なことがあれば、まさにこれはあの罪、この罪の故である、自分はもう神の祝福の中にはいないのだ、と思ってしまうものだろう。それはある意味で、素直さを失っていることでもあるのだが、私たちの心は強情で、悔い改めを迫られても、どうせ自分はだめである、と諦めの気持ちになってしまうものだ。罪の性質は、不可解に私たちの心の奥底にへばり付いており、それは取り除きがたいものなのである。真の悔い改めは、なかなか起こりえない。
 そのような強情な私たちに対する神の答えは、「あなたの言ったそのことも、わたしはしよう」である。つまり、モーセが求めた共に行くことを了承したのである。それは、14節で語ったことを再度、確約されたことであった。しかも考えてみれば、神は、自分の義が不用意に民を滅ぼすことを警戒しておられたのだから、そこでそうならないようにさらに細心の注意をもって民と共にあることを決意された、ということだろう。つまりそれは、単なる思い直しではなく、さらに深い愛を示すことの決意であった。そして、その根拠として「わたしは、恵もうと思う者を恵み、あわれもうと思う者をあわれむ」(19節)と語る。神の愛に理屈はない。神の選びは絶対であり、永遠に神の意思は変わることはない。
 今日私たちはその神の恵みのことばを、聖書と聖餐式によって繰り返し確認する。ことに聖餐は、イエスの十字架の罪の赦しと恵みが変わることなく、私たちのものであることを繰り返し覚えるためのものである。だから、教会から聖餐式がなくならない限り、私たちの罪の赦し、そして愛が取り消されることはない。
 一方、モーセは神にさらに求めた。「あなたの栄光を私に見せてください(19節)」と。罪人に対する臨在が保証された後で、モーセは忠実な者がさらに神の臨在を身近に得られることを求めた。神を直接見たいと。しかし、神は神秘であり、私たちは知ることも理解することもできない。神の完全な啓示は、その後キリストにおいてなされていく(ヨハネ14:9)。神を神として仰ぎ、謙虚に人としてあること、そこに神は確かに臨在されるのである。そして「あなたを休ませる」と語られる神の声に日々耳を傾けることが、私たちの魂の深い安らぎとなり、生活の安定となることを覚えたいものである。

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