詩篇10篇

10篇 あなたがお助けになる

<要約>

おはようございます。「継続は力なり、聖書を一日一日と読み進むなら、不思議にも自然に養われていくものがあるものです。」ラジオ放送の私の決まり文句ですが、今日の箇所でも最終的にはそういう部分を大事にしたいと思わされるところがあります。今日も、主の恵みを信頼し、支えられる豊かな一日であるように祈ります。主の平安
1. 背景

10 篇は、9篇の続きであるとも、別物であるとも、考えられている。伝統的にローマ教会は、七十人訳およびウルガタ訳(ラテン語訳)に倣って両者を一つに数えているが、プロテスタント教会では、別個に取り扱う傾向にあったようだ。ただし、10篇に表題がないことや、先に述べたようにいろは歌としての連続性があること、そして9篇は神の確かな勝利、10篇はやがて滅びる悪しき者の現在の勝利、をテーマにしている、と捉えてみれば、内容的に対の作品として読むことができる。

2.悪しき者の繁栄

最初に詩人は、悪しき者が栄える姿を描き出す。悪しき者は、この世で成功し、自己満足に陥り、ますます自分の欲望を誇り、金だけを目的とした人生を生きていく(3節)。神など求める気持ちはさらさらないし、神などいないと主張する(4節)。だから物事が片っぱしから成功するのは、自分の力の故である、と高慢に陥っている(6節)。彼らの口には、偽りと欺きが満ちている。そして自ら守るすべのない弱い者を、いや、弱められた不幸な人を狙って餌食にしていくのである(8節)。結局、そのような悪しき者の犠牲になる不幸な人は、その歴然とした力の差に「砕かれ、崩れ、倒れ」てしまうのだ(10節)。彼は言う。「神は忘れている。何も見ていやしない」(11節)。

何とも不条理な世界であるが、大昔に書かれたとは言い難いほど、リアルである。力ある者が結局、弱い者を牛耳っていく、その苦労の上に胡坐をかいて、のうのうと生きている。それは、昔も今も変わらない。ごく身近なところで見聞きもし、経験することでもないだろうか。

それにしても、なぜ邪悪な者は栄えるのか。なぜ貧しい者は益々貧しくなるのか。悪者は安泰で、敬虔な者は苦しむのか?神は、ご自身の忠実なしもべを忘れ去り、見捨てられたのか?ヨブ記にも取り上げられたことであり(ヨブ記24章)、いつの時代にも繰り返される質問だ。

3.祈り

後半は、その虐げられた者、苦しめる者の祈りである。このような矛盾に満ちた状況の中でいかに祈るべきかの道しるべである。詩人は祈っている。「主よ。立ち上がってください。神よ。御手を上げてください。どうか、貧しい者を、忘れないでください。」神が沈黙され、祈りのことばが空しく闇に吸い込まれていくように思われる時であっても、信頼を持って祈りをささげ続けることだ。望みえない時にこそ、敢えて神の約束に寄り頼むのである。「あなたは見ておられました」(14節)。「あなたは「じっと見つめておられました」(14節)。神は忘れている、何も見ていないんだと心のつぶやきが起こる中で、敢えて「あなたは見ておられた、じっと見つめておられた」と臨在される主に対する信仰を明らかにしていく。さらに神は見ておられるだけではない、「あなたはみなしごを助ける方でした」と神の実際の介入を信じるのである。リビングバイブル訳が、祈る言葉を与えてくれる「ああ主よ。貧しい者はあなただけが頼りなのです」

しかし、実際問題として、「神は忘れている、何も見ていない」と心がつぶやき、叫ぶ中で、敢えて「神は見ておられる、神は介入される」と祈ることは、大変な心のエネルギーを必要とする。いかにして不信仰な心の向きを逆向きにできるのか。それができたら苦労はない。いいや、無理だと考えた方がよい。むしろ、子どもがどうやって、親に応答するかを考えてみよう。親の語り掛けをたくさん受けることにより、ママ、パパから始めて、応答するようになるのである。信仰も同じだ。神の語り掛けを、毎日、繰り返し、大量に受けない限り、信仰的な応答は決して生まれてはこない。信仰的になろう、と無理な背伸びはせずに、まずは、ゆっくり、静まって、神の語り掛けを受けることだ。そして繰り返し繰り返し受けることだ。「継続は力なり、聖書を一日一日と読み進むなら、不思議にも自然に養われていくものがあるものです。」と私は毎週のラジオ放送のメッセージを始めるが、神への自然な応答もそのようにして養われていくものなのだ。それは一朝一夕のことではない。パウロも、不信仰を乗り越える苦闘をしている。彼は、自分の弱さを気にしていた。これがなければもっと宣教を進められるのに、と考えたのであろう。しかし、神は、その弱さのあるままにパウロを用いようとされた。パウロもそれがわかるまで、三度も祈り求めたという(2コリント12:10)。信仰を体得していく者でありたい。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください