詩篇41篇

41篇 神の恵みは尽きない

<要約>

おはようございます。41篇は、詩篇第一巻の結びの詩篇となるものです。詩篇は、全部で五巻ものの書、というべきで、それらは、最後に必ずまとまりがあります。詩篇の構成を理解しながら、読み進み、またそこに語られている内容を、我が主イエスもまた読み味わい、そのみ言葉に支えられたことに注意したいところです。今日も、主の恵みを信頼し、支えられる豊かな一日であるように祈ります。主の平安

  1. 文脈

詩篇第一巻の結びの詩篇となる。1篇は、主を愛する者の幸いを詠うものであったが、この41篇は弱い者へ心を配る者への幸いが詠われている。これまで、一巻では種々の幸いが語られてきた。主に身を避ける人の幸い(2:12)、主そのものと共にある幸い(16:2)、そむきの罪を赦されている幸い(32:2)、主をおのれの神とする幸い(33:12)、主に身を避ける者の幸い(34:8)、主に信頼し、高ぶる者や、偽りに陥る者たちのほうに向かなかった者の幸い(40:4)。幸なことの中心は、主に心を向けることにあるが、最後に、第一巻は人に心を配る者の幸いをもってまとめている。しかしながら、3節以降のダビデの祈りと、人に心を配る者の幸いはどのようにつながるのか。

2.背景

前篇、39篇、40篇とのつながりは定かではないが、この詩編もまた、病と思わしき試練の中で詠われている。人は病の中で、どんどん、希望を失っていくものだろう。病は身体のみならず心をも蝕んでいく。悲しみと苦しみの中で、心は後ろ向きになり、素直さを失わせ、心を拗けさせていくことがある。そこでさらに追い打ちをかけることも起こりうる。ダビデは病床にあって、敵意ある者の見舞いを受けたようである。心配そうに見舞う外見とは全く異なる腹の底がある。「とっととくたばれ。早くあの世に行ってしまえ」(5節)「どんな病気か知らんが、もうすぐお陀仏さ。もうお前と会うこともない。」(8節)と、人の心の裏を思わされるとは、なんとも悲しい状況である。何事も善意に受け止めたいものであるが、現実は、実に冷酷であったりするものだ。

9節は、イエスによって引用されている(ヨハネ13:18)。イエスも、律法学者の敵意が強まり、十字架の危機が迫る中で、この詩篇を思い出し、その孤独感を理解していた。実際イエスの十字架は、自分の生が疎まれ、完全に否定される、心折れる状況であったのだ。そのような苦しみに置かれている人は、少なくとも、イエスもまた同じ苦しみを味わったことを覚えるべきだろう。そして、イエスがどんな苦しみを乗り越えて、人の救いを実現されたのかを考えたいところである。

3.絶望の淵での祈り

ダビデは絶望の淵で主に懇願し訴えている。10節「報いを返せる」第三版では「仕返し」であった。リビングバイブルの「見返すことができる」が、ぴったりくるような気もする。実際イエスも復活の勝利によって、ある意味で見返すことができたのである。人々は、イエスがまことの神の子であることを認めざるを得なかった。イエスは完全に否定されたが、イエスご自身の業は完全に認められたのである。

大切なことは、主に与えられた人生に誠実を尽くして生き抜くことである(12節)。誠実を尽くすというのは、大きなことを意味しない。それは、日常性の中にあって面倒なこと、丸く掃いて済ませてしまいたいことも、しっかりやることである。それは同じ十字架の苦しみの中にあって、イエスが救いを求める強盗に、あわれみ深くあったように、自分をどうこうするというよりも「弱っている者に心を配る」、人間として全うな感覚を忘れないでいることであったりする。

ダビデは絶望の淵で、神のあわれみに寄りすがっているが、その祈りが生きて来るのは、そうした人生があればこそだろう。もちろん、完全な人生はありえない。行いによって神の祝福を勝ち取ることもできない。むしろ100点満点中20点と思わしき人生であっても、神の前に悔い改め、弱い者に心を配り、誠実さをもって神の哀れみに寄りすがり生きるならば、神はこれを見捨てるはずがない。神の愛は人が考える以上に豊かである。神は偶像のように血の通わぬ神ではない。目には見えないが、喜びもし、痛みもし、心配もされる神である。人はその神の愛に支えられることを、どこかで学ばなくてはならない。そのようにして初めて、人は強くなれるのである。

4.頌栄としての詩篇

13節、詩篇第一巻は頌栄で結ばれる。詩篇の5巻はそれぞれ讃美でまとめられる。二重のアーメン(41:13、72:19、89:52)、アーメン・ハレルヤ(10:48)、もしくは二重のハレルヤ(150:6)とバリエーションはあるが、頌栄でまとめられる。詩篇集は、内容的に気分の変動はあっても、つねに神を仰ぎ、讃美することを基調とする。

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