詩篇49篇

49篇 かかとを転じられても

<要約>

おはようございます。今日の詩篇は、知恵の詩篇と分類されるものです。人類一般に対する教訓的な詩篇です。単純に読めば、金持ちや、悪者に対する批判のようですが、5節が全体のかじ取りをしている詩篇であって、神の前に不正な者、不真実な者に対する神の裁きを語っていると言えるでしょう。つまり、お金のあるなしの問題ではない、たましいの救いを得ている得ていないの問題ではない、ということです。熟読したい詩篇です。今日も、主の恵みを信頼し、支えられる豊かな一日であるように祈ります。主の平安

1.文学的ジャンル

「すべての国々の民よ、これを聞け」この詩篇は、全人類への呼びかけから始まっている。これは、一読すればわかることであるが、礼拝のための詩篇というよりは、伝道者の書のように教訓を提供しようとする知恵の詩篇に分類されるものである。神と特別な契約関係を持った者だけにではない、全ての人が耳を傾けるべき重要な真理を語っている。2節、「低い者も、高い者も」は、身分の高い者も、低い者も、ということだろう。「人類すべて、生きている者一人一人」と呼びかけられているのである。

2.文脈、かかとを転ずる

さて詩人は言う「なぜ、私はわざわいの日々に恐れなければならないのか。私のかかとを担う者の悪意が私を取り囲むときに」(5節)。第三版では、後半は「私を取り囲んで中傷する者の悪意を」であった。文末の動詞、サバーブは、伝統的に「取り囲む」と訳されてきた。しかしそれは、「転ずる」という意味を持つ。その前に「かかと」を意味する「アーケブ」がある。そこで、「かかとを転ずる」という理解はできないものか、と思う。つまり、「私のかかとを転ずる者の悪意によって、わざわいが訪れる時に、私はなぜ恐れなければならないのか」である。不意に人生の方向性を変えられてしまう、それがわざわいとなって訪れることがある、まるでヨブのように。非常に乱暴な形で、不本意な形で、人生の進む方向を、つまりかかとが向かう方向が転じられることがあるのだ。その時のみじめさ、悲しみ、苦しみ、それはヨブ記に切々と訴えられている。だが、それをなぜ恐れる必要があろうか、ということだ。しかも、自分の人生の方向性を転じさせた者たちが、いよいよ力を増し、富を誇り、富に任せて自分たちの力をあからさまに見せつけることがあっても、というわけだ(6節)。

なぜか。それは、彼らの栄光が永遠に続くように見えたとしても、それは一時だからだ。そして悪者が行く道に良い終わりはないからだ、ということだろう。7節「兄弟さえも、人は贖い出すことができない、自分の身代金を神に払うことはできない」とは唐突だが、詩人の思考の流れは、14節まで続いていて、不本意な形でかかとを転じた者たちに、神はその責任を問われる、という確信が述べられている。彼らは神の裁きが迫っていることを自覚できないでいる、自分たちはこれほど祝福されているのだから、自分たちのやっていることに間違いはない、というのだが、事実それは逆で、彼らにとって致命的な運命だ、と言うわけだ。彼らは今の世では、どのように祝福されようとも、獣と同じように、その終着駅は「よみ」なのである、と(14節)。

3.神との喜びを大事にせよ

だから恐れるな。たとえあなたが今よみに捨て置かれているように感じていたとしても、神は、そのための贖いの代価を支払ってくれる。不可能なことを可能にしてくれるのだ、と(15、16節)。だが、あなたのかかとを転じた者に対してはそうではない。エリザベス1世が死ぬ時に、こう語ったそうである。「私が所有するすべての財産は一時的なものである」と。確かにお金は多くの事を成し遂げ、多くの業績を残すことだろう。しかし人を虫けらのごとく扱い、粗末にする人間の栄華は続かない。それによって彼は、この世の貨幣を自由にできても、たましいの贖いの代価を得ることはできない。その罪の責任は問われるのである。彼の富も、名声も、取り囲む多くの友人たちも、神の前における彼の裁きを有利にすることはできないし、彼の黄泉に下る運命を簡単に覆すことはできない。否、彼は何一つこの世のものを、神の前に持ち出すことはできないのだ(17節)。

大切なのは、自分自身が神の前にどう生きているかを悟ることなのだろう。人は神を恐れなくてはならない。人を見下すところに悟りはない。たとえ今自分はうまくいっている、人も自分を認めてくれている、と思うところがあっても、それが、人の搾取の上に成り立っているのであれば、そのような栄華は続かない。神の前に正しい人生を歩んでいるかどうか、人は常に自分の心を見張り、謙虚さの中に生きることを学ばなくてはならない。

なお、一連のメシヤ詩篇に続いてこのような知恵の詩篇が収録されることも興味深い。実に、たましいが神に結び付いてこそ、主にある教訓も活かされるからだ。

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