民数記19章

19章 汚れをきよめる水の作り方と用い方
1.死の汚れからのきよめ
先の18章では、神の臨在する幕屋に仕える祭司とレビ人の役割、神の怒りから民を守る、いわば結界とも言うべき、体を張った役割があることが語られていました。19章は逆に、一般の人々が、神の臨在する神聖な幕屋を汚さないために、しかも人間は汚れるものであるという状況のある中で、どのようにしたよいのか、を語っています。実際、16章のコラの反逆の結果、多くの人が一度に死んだ結果、人間の死の汚れに触れる現実的で深刻な課題があったのです。誰でも死体や人間の骨や墓に触れるなら、あるいは、死人の天幕に入るならば汚れ(14-16節)、その汚れは伝染する(22節)と言うのですから、何らかの対応をしないと、主の幕屋を汚す恐れがありました。。
これまで人の死体に触れた場合の戒めは幾度か取り上げられてきています(レビ記21:1-4、11、民数記6:6-12、9:6-12)。しかし、ナジル人の場合(民数6:6-12)以外、その汚れを取り除く具体的な方法は示されていません。そこで本章は、一般人が死の汚れを清めるためのきよめの水の作り方、使い方を示しているのです。
2.きよめの水の作り方(19:1-10)
まずその作り方ですが、くびきの置かれたことのない赤い雌牛を犠牲にし、灰を用いるのです。「くびきの置かれたことのない」というのは、まだ労働力として用いられる前の、活力にあふれた牛という意味でしょう。「赤」はおそらく血の色、いのちの象徴で、「雌」はいのちを生み出す象徴です。重要なのは、雌牛は焼かれますが、いけにえとしてではなく、きよめの水を作る目的のために焼かれるのです。ですからそれは、杉の木、ヒソプ、緋色の糸を添えて焼かれました。「杉」は、強さと長寿、「ヒソプ」は、きよめ、「緋色の糸」はいのちの象徴です。これらによって灰を作り、必要な時に水と混ぜるために、集められて宿営の外に保管されました。興味深いのは、このきよめの水を作る作業をする者は、その日の夕方まで汚れてしまうのです。ここに罪の汚れを一身に背負った身代わりの思想があると言うべきでしょう。民のために祭司が汚れを引き受ける、人の罪を聖める作業というのは、聖い私が、汚れたあなたを救うというものではないのです。赤い雌牛も身代わりとなって、人の死の汚れを吸収しますが、同時にそれは汚れをきよめる水となって再生するのです。
3.きめの水の用い方(19:11-22)
こうして死と汚れを聖める水は、死に触れて汚れた者に、三日目と七日目の二度振りかけられます。この儀式を守らない者は、宿営から絶たれます。そもそも赤い雌牛が、特例であることから、実際上、特例措置としてなされたのでしょう。ただし、そこに示された身代わりときよめの思想は、へブルの著者が言うように、キリストの救いの効力を予表するものです(ヘブル9:13、14)。
4.今日的意義
こうして、原始的で、魔術的な旧約の定めについても、その本質的な思想は、新約の時代には、キリストの救いを語るものとして再解釈されるわけです。つまり、古臭い宗教的な儀式と読み過ごしてはならない部分なのです。赤い雌牛は、キリストの人格と同様に、傷がなく、くびきをつけられたことのないものです。つまりくびきは、服従の象徴ですから、赤い雌牛も、イエスも神のみこころだけに完全に服従するために、取り分けられていたことを意味します。また雌牛が赤いのは、キリストが十字架にささげられ、血を流されたことに重ねられます。血は聖書の中では最も強力なきよめの手段であり、確かに御子イエスの血はすべての罪から私たちをきよめるのです(1ヨハネ1:7)。さらにこの雌牛は、宿営の外で殺されなくてはならなかった。イエスも、城壁の外に出て、ゴルゴダの丘で殺されました。しかも、この赤い雌牛の犠牲は、これ以前にもこれ以降にも一度限り、完全な一度限りのいけにえです。イエスのいけにえも、全人類のための完全な一度限りの犠牲であり、いけにです。イエスの死によって、私たちは、神の怒りから解放され、罪の赦しを得、罪の支配からも解放されました。実に、このように雌牛が人の罪を赦し、きよいものとするならば、尊いイエスの犠牲はまして、どんなに素晴らしい恵みを与えるであろうか、と言うわけです。
つまり、この儀式は、イエスの十字架もそうですが、人間に必要な人生における最も深い真理を、その時代的な感覚で語っているのです。汚れが当たりまえの世の中で、神の怒りの結界を守る祭司がいると同時に、罪の赦しの手段である、イエスの十字架の救いもある。二重に、三重に、弱き罪人が守られるシステムが語られる。神と人の差異を理解すればするほどに、それは神の恵み深い定めであると言うことができます。では今日もよき一日となるように祈ります。

<クイズコーナー>
最初に、昨日のクイズです。旧約聖書に出てくる重量の最小の単位は、なんでしょうか?①ゲラ、②シェケル、③ベカ、④ピム、答えは①ゲラです。ゲラは、約0.57グラムでシェケルの20分の1になります。10ゲラで1ベカ約5.7グラム。そして7グラムのピムがあり、最もよく使われる約10グラムのシェケルがあります。ちなみに50シェケルで1ミナ約570グラム、60ミナで1タラント、約34キロになります。では今日の聖書クイズを一つ。きよめの水をつくるために、赤い雌牛を焼くときに、一緒に焼却する三つのきよめを象徴するものは何でしょうか。三つあげなさい。答えはまた明日。では、今日もよき一日となるように祈ります。

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