創世記36章 エサウの歴史
1.エサウの系図(35:1-30)
35章は、エサウの歴史となっています。ちょうどアブラハムとイサクの歴史の間にイシュマエルの歴史が簡単に綴られた(25:12-18)のと同じで、ヤコブから、ヤコブの子どもの歴史を書き足す前に、エサウの歴史を概述しているのです。そして、6-8節は、エサウがセイルの産地に住むようになった決定的な要因を記しています。ただ、ざっと読んでみると、何を感じてよいのか、意味不明のカタカナ名が続いています。2節ヒビ人と語られたツィブオンが、20節ではフリ人とされているのも気になります。同一人物の書き間違いなのか、それとも別人なのか、よくわかっていません。24節「荒野で温泉を見つけた」とあります。これが特記されている意味はなんだろうか、と思わされるところです。実際にはヘブル語原語の意味は不明で、ラテン語訳に従って「温泉」と訳されたと言います。あるいは、シュパイザーという聖書学者が言うように、シリヤ語訳に従って「水」と訳して、荒野で泉を発見した、という意味にとるのがよいのかもしれません。ともあれ、エサウからも、様々な人々が生まれ、地に増え広がり、生活を営んだあれこれがある、と受け止めることなのでしょう。そしてこれらの人々も神には覚えられた人々なのです。そのような意味で、エサウは、「神の祝福のことば」を受けることはなかったけれども、実際には、36章に書き綴られているように地に満ち、増え広がり、世俗的な意味ではヤコブに負けずとも劣らず大いに神に祝されたと言えるのです。神は、「神の祝福のことば」を受け損なったエサウを見捨てて、無一文に滅びるままにされたというわけではない、むしろ、エサウの子孫もまた神に覚えられ、大いに祝されたと読者に訴える。神は全世界の救い主であり、正しい愛のお方だ、というわけです。こうなると、エサウが受け損なった「神の祝福のことば」というのは、何なのかを改めて考えさせられるところでしょう。
2.死ぬと代わりに(36:31-43)
31節、「イスラエルの子らを王が治める以前」とあります。普通に読めば、これはどうも、創世記がかなり後の時代、どうもこの著者は王政時代にあって、この文書を書いていたのではないかと考えさせられる部分です。実際捕囚期以降に書かれたと言われる1歴代誌1:43-54にも同じリストが出てきます。となれば、創世記の著者は、かなり後の時代なのか?いやいや、創世記は、王政時代前に書かれたとして、歴代誌の著者、あるいは後の時代の人が、部分的に手を加えたと考えることもできるでしょう。ただ、伝統的にこの書を書いたと言われるのはモーセですが、モーセはエジプトの王政を経験していますから、ヤコブの子孫、つまりイスラエルに先んじて王制を発展させたエサウの子孫を綴り、ヤコブの子孫もまたこのように記録されることを確信しながら書いた、ということもあります。 あれこれ考えさせられるところですが、このエサウの系図を繰り返し読むと、そこに一つの特徴が見えてきます。つまり、それは、人が「死ぬと代わり」の人が継ぐ歴史です。どんなに優れた人物にも「代わり」が起こってくるのです。世俗的な祝福は、豊かに富んでもこれを誰かがとって代わり、受け継いでいく、この繰り返しです。しかし、「神の祝福のことば」を受け継いだ者の歴史はまた違うのです。
創世記の後半、ヤコブの子ヨセフの物語がそれをさらに明確にしていきます。神を信じる者、神の子と呼ばれる者たちが何を大事にして生きていくのか。それは、少なくともモノが豊かになることではありません。神は、エサウの子らにも、それらは惜しみなく与えられているのです。神がエサウに与えられず、ヤコブの子らにのみ与えられた「神の祝福のことば」の本質は何か。これからの聖書の主題をわかりやすくするために、敢えて結論から言うならば、それは、アブラハムが語られた、散らされた者が一つとなる祝福を地にもたらす、ということでしょう。アブラハムは言われました。「あなたは祝福となる」これはエサウも預かる祝福です。彼がさらに言われたことは「地のすべての部族はあなたによって祝福される」(創世記12:3)。つまりアブラハム、イサク、ヤコブの子孫は、単純にこの世の富を受け継ぐ者たちではなく、あらゆる富を分かち合う者たちです。「生きて分かち合う」ここに使命があるのです。それは新約聖書的に言えば、主イエスにある和解と平和の祝福を受け継ぎ、それを分かち合うことでしょう。物の豊かさではなく、魂の豊かさを祝福として見ていく、そのような一日でありたいものです。では今日もよき一日となるように祈ります。
<クイズコーナー>
最初に、昨日のクイズです。「イスラエルの12部族は、出エジプト後、構成メンバーが変わります。1部族が2部族に分割され、その分、特別枠となり、主として祭儀を扱う部族は、どの部族でしょうか?」答えは、レビ族。出エジプト後、ヨセフ族は、エフライム族とマナセ族に二分割され、部族は、13部族、これを12部族とするためにレビ族が特別枠となりました。では、今日の聖書クイズを一つ。カナンは、シリヤ・パレスチナ全土を指すことばとして用いられることがありますが、カナン人と呼ばれる人々に入らないのはどれでしょうか?①ヒッタイト、②エブス、③クシュ、答えはまた明日。では、今日もよき一日となるように祈ります。
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