マタイの福音書2章 東方の博士とヘロデ王
おはようございます。イエスがお生まれになった時のエピソードが語られます。それは旧約預言の成就であったと。大切なのは、預言通りにお生まれになったその目的です。今日もぜひ聖書を開きながら読んでください。今日はマタイの福音書1章からです。
1.東方の博士
イエスがお生まれになった日を、AD元年としたのは、6世紀のローマの修道院長ディオニシウス・エクシグースで、イエスが実際にお生まれになったのは、AD5、6年頃と考えられています。マタイは、そのイエスがベツレヘムでお生まれになった時、東方から博士がやってきたと言います。エルサレムの東方は、バビロンの方角で、BC6世紀のバビロン捕囚でユダヤ人が捕虜として移住させられた地方ですから、そこでは旧約聖書のメシヤ預言が、よく知られていたのでしょう。彼らは、メシヤ誕生を告げ知らせる、不思議な星の光に導かれてやってきたわけです。
この星については、様々な議論があります。星の大爆発説、流れ星説、彗星説など。最も妥当な説は、ケプラーが唱えたもので、800年に一度、火星と木星と土星が大接近する会合説で、BC6-7世紀頃に生じたと言われます。ただ聖書に書かれていることは、いつでも科学的、合理的に説明する必要はないでしょう。そもそも神は天地万物をお造りになったお方ですから、超自然的な特別なしるしを起こすなど容易いことです。また万人の上に輝く普通の星が、メシヤ預言を信じる東方の博士には、特別な光であったということもあります。
2.恐れるヘロデ
さて3節、ヘロデ王がメシヤ誕生の話を聞いて動揺しています。ヘロデは、とても有能な王でした。高架式の水道橋、エルサレム神殿、マサダの要塞など、彼の偉業の跡はたくさん残されています。彼の能力は誰の目にも明らかでしたが、彼はエドム人で、ユダヤ人の王としての尊敬は得られないでいたのです。そのため彼は、ユダヤ人の名家ハスモン王朝の王妃マリアムネを妻としていました。しかし、それでも劣等感は埋め合わせきれず、やがて彼は、王位を脅かすと思われる者は、妻であろうと子であろうと次々と殺していく異常性に陥っていくのです。そこへ「ユダヤ人の王」と噂されるイエスが誕生したわけです。エルサレム中の人が恐れ戸惑ったのも無理はありません。王は二歳以下のユダヤ人の男の子を殺す命令をくだしました。当時の人口からすればそれは20人程度であったとされますが、大事件であったことに変わりはありませんでした。
しかし、イエスも、東方の博士も、神の守りによってこの惨事から逃されていきます。マタイは、イエスの家族がエジプトに逃れ、また帰って来てナザレという町に住んだことを記録しますが、それら一つ一つが、旧約聖書の預言の成就であったと言います。大切なのは、その預言通りにこの世に登場したイエスが、どんな目的で現れたかということでしょう。鍵となるのは6節「あなたから治める者が出て、私の民イスラエルを牧する」です。これは文字通りではなく象徴的に理解すべきことばです。イエスはダビデ家の王子として生まれましたが、そのダビデ家は既に没落し、世の狭間に消えさろうとしていました。そのどん底から始めて、神は、私たちを治め、養われるというのです。ひっそり始まる大きなチャレンジ、私たちに希望を与える物語の始まりです。では、今日もよき一日となるように祈ります。