創世記32章

32章 ペヌエルの経験
1.帰ってきたヤコブ(32:1-21)
伯父ラバンに仕えて、既に20年(31:41)、跡取り息子のできたラバンは、明らかにヤコブに対する、態度も待遇も変えたようでした。ラバンのもとに、ヤコブの居場所はなく、ヤコブは、神に語られたとおりに約束の地であり、ふるさとでもあるカナンへ帰ることを決意します(31:18)。しかし実際のところ、ふるさとに戻ることが、彼にとって良い選択であるかどうかは、わかりませんでした。というのも、そこには、かつてヤコブに騙されて怒り狂い、ヤコブを殺そうとした兄エサウがいたからです。果たして、その兄エサウと、和解し、平和裏に安住することができるのか、彼には全く見当もつきませんでした。彼は兄エサウに、前もって使いを出し、感触を探ろうとしています。しかし、使いが持ってきた情報は、ただ、エサウが、400人のしもべと引き連れて、ヤコブを迎えに来るというものです。ヤコブは、もしや兄は仕返しをしようとしているのか、胸騒ぎを覚えたのでしょう。そこで彼は、エサウの好意を得るために、あれこれ考えだすのです。
マハナイムは、その所在については、一説にヤボクの北に位置し、現在のキルベト・マハネーとされています。そこでヤコブは、再び、神秘的な体験をしました。かつて家を出た最初の夜、ベテルで一夜を明かした時にも、ヤコブは夢の中で神の励ましを受ける経験をしています。今回も、それに匹敵する経験です。しかしそれでもヤコブの心の不安は取り除かれませんでした。そこでヤコブは、対策を考え(7-8節)祈り(9-12節)、また思いついては対応方法を変更し(13-21節)、さらに祈りました(22-32節)。そして、エサウを目撃するや否やまた対応方法を変えています(33:1-3)。ヤコブの恐れ、不安をそのまま表しているのではないでしょうか。ああでもない、こうでもない、不安の波風にもてあそばれたヤコブの姿がそこにあります。ただ創世記の著者が記録したヤコブの祈りは、そんな時に、どのように祈ればよいのかを教えてくれます。まず、自分が神の恵みを受けるに足りない者であることを素直に告白することです(10節)。そして、自らの心の恐れを素直に打ち明けることです(11節)。そしてさらに「神の祝福のことば」への信頼を表明することです。
2.神を味方につけたヤコブ(32:22-32)
しかし、最も大切なことは、神を味方につけることでしょう。その日の夜、ヤコブは、皆にヤボクの川を渡らせると、独りそこにとどまりました。そして「ある人」と夜明けまで格闘したと言います。「ある人」は通説では神です(32:28,30)。格闘は、ヤコブのもものつがいがはずされ、足が不自由になったとあるように体と体をぶつけ合う、体当たりのものでした。しかし、それ以上に、神にある将来の見通しと、平安を得る霊的なものでした。それにしもて、神が人間に負けるなど、実に不思議な表現です。しかしそれは、神がヤコブよりも弱かった、と言っているのではなく、弱いヤコブの執拗さに勝てなかったということでしょう。ホセアが言うように、「ヤコブは勝ったが、泣いて願った」(12:4)のです。つまり、神は、泣きじゃくって体当たりしてくる子どもヤコブに、勝ちを譲ってあげたのです。実はこれが祈りの極意なのです。神の愛の懐に飛び込んで、本当に、私は何もありません、私は神には勝てません、神の心すら動かすことのできない、詰まらない人間です。でも、神様助けてください、あなたの祝福がなければこの先一歩も進めないのです、という体当たり、神は、実に愛のお方、その真摯なことばを無下に突き返すような方ではありません。真にへりくだり、心貧しくある者に、「あなたが神と、また人と戦って、勝った!」と勝ちを譲ってくださるお方であることを覚えたいものです。ヤコブはこの戦いで「イスラエル」という新しい名を与えられています。それは「神と争う者」という意味で、後に神の民の名となりました。また、神との格闘の故に得た祝福の素晴らしい経験を記念し、その場所を「ペヌエル」と名づけました(32:30)。太陽が昇りました。まさに新しい出発を照らす、希望の光であったことでしょう。
ピンチはチャンスです。それは「神の祝福のことば」により頼む幸いと平安を知る重要な時です。私たちの予測する結果がすべてではありません。神に生きるその計り知れない可能性と祝福を覚えて歩ませていただきましょう。では今日もよき一日となるように祈ります。

<クイズコーナー>
最初に、昨日のクイズです。「王国時代、宗教改革の際に、ユダとエルサレムにあったテラフィムをすべて除き去った王様は、誰でしょうか?」ヨシヤ王(2列王記23:24) テラフィムは、病気よけや祖先崇拝に使われたとも言われますが、用途は不明です。では、今日の聖書クイズを一つ。マハナイムは様々な意味で、聖書では重要な都市ですが、ここを首都と定めて王に即位した人物は誰でしょうか?答えはまた明日ですが、今日はもう一つ、アナウンスがあります。ただいま、聖書通読ブログクイズコーナーのクイズ大賞を募集しております。詳しくは、ブログのご案内を参照してください。皆さまから寄せられたクイズ案を、パスターまことの聖書通読ブログ作成チームが審査し、大賞、および奨励賞を取られた方に、もれなくパスターまことの著書を差し上げます。ぜひ奮って応募してください。では、今日もよき一日となるように祈ります。

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