創世記47章

創世記47章 ヨセフの政策
1.ヤコブの人生の総括(47:1-12) 
エジプトに来たヤコブは、ファラオと会見しました。ヤコブは、ファラオの質問に答えて自分の人生を「いろいろなわざわいがあり」(9節)とまとめています。確かに、ヤコブの人生を振り返ってみれば様々なことがありました。兄エサウを騙して、家を追い出されたところから始まり(27章)、ラバンに騙されて20年も安くこき使われ、不条理な人生を歩まされ(29-31章)、自分が望みもしない4人の妻の争いに巻き込まれ(30章)、息子、娘たちの浅はかな行動のために、自分が住み着こうと買い取ったシェケムの地を追われ(34章)、心のよりどころであった妻ラケルを失い(35章)、その妻の形見であり、誰よりも大切にしたかったヨセフを、レアの息子たちに奴隷として売り飛ばされ(37章)、終いには、最愛の妻ラケルの最期の形見、ベニヤミンさえ奪われそうになったのです(42章)。ヤコブの人生は、「いろいろなわざわいがあり」とその記憶に圧倒されそうなものであったことでしょう。しかし、ヤコブは、そのような人生を神とともに生き延びて来たのです。
 家を追い出されたヤコブは、それを機に、共におられる神を知り、べテルに祭壇を築いています(28章)。ラバンに散々利用された20年の後、ヤコブは、「神は私の苦しみとこの手の労苦を顧みられ、昨夜さばきをなさったのです」(31:42)と神がその苦難から解放されたことを認めています。またシェケムの殺戮でカナン人とペリジ人の憎まれ者になり、存在が危くされた時には、神が、恐怖を町々に下して守ってくださったことを理解しています。ヤコブは様々な苦難の局面で、神の助けと守りがあったことを認識しているのです。ですから、最愛の妻ラケルが死に臨んだ際に、ラケルが生まれてくるわが子を「ベン・オニ(悲しみの子)」と呼んでも、ヤコブは、その名を「ベニヤミン(我が右手の子)」と積極的に読み替えて、乗り越えています。そして、ベニヤミンがエジプトへ連れていかれる時も、「全能の神」(43:14節)にすべてを委ねる姿勢を見せているのです。
自らの人生を振り返って「いろいろなわざわいがあり」と思わざるを得ないことがあるものでしょう。楽しいことは何もなかったとすら思えるような人生があるかもしれません。しかし、神を知る人生がいつも幸せと言いうるものであるとは限らないものです。キリスト者の人生は綺麗ごとではないのです。しかし、神と共にその苦難を乗り越えることができることもまた真実です。ヤコブの生涯はそのことを明確に語っています。様々な破れや痛みがある厳しい現実の中で生き抜いていかなければならぬ人間に、ご自身の「祝福のことば」が確かであることを示し、最期まで望みを捨てないように、と励まし、寄り添い、支えてくださる神がおられることを覚える、それが大切なのです。それは、まさに、イザヤが「ヤコブよ、あなたを創造した方、イスラエルよ、あなたを形造った方が。「恐れるな。わたしがあなたを贖ったからだ。わたしはあなたの名を呼んだ。あなたが水の中を過ぎるときも、わたしは、あなたとともにいる。川を渡るときも、あなたは押し流されず、火の中を歩いても、あなたは焼かれず、炎はあなたに燃えつかない」(43:1-2)と語ることを、真実であると受け止めるようなものです。こうして読んでみると、創世記は、実に神の祝福のことばに生きる人生が何であるか、その本質を語る、感動的な書であると思わされるところです。
2.ヨセフの飢饉への対応(47:13-31)
さて、ヨセフの活躍が描かれています。この記録は、ヤコブにとって、それは、「いろいろなわざわいがあった」人生を忘れさせてくれるような、息子ヨセフの働きを語っています。しかし政策的関心から読んでみれば、ヨセフの活躍は、単に飢饉から人々を救うという対処療法的な働きを超えたものであると教えられます。つまり、彼は、食糧と引き換えに土地を買い取り、税制度を導入し(25節)、エジプトの将来を築く国の構造改革を成し遂げているのです。20%の税率は極めて高いと思われますが、40~60%にさえ達し得る古代社会の税率に比較すると、十分民衆に配慮したものである、と言われます。こうしてヒクソス王朝以降、エジプトでは土地その他の財産の集中的な国有化が進んだことも知られています。ともあれヨセフは、17節、人々に難局を乗り切らせました。
ヨセフが、大所高所で物事を見、将来につながる政策を成し遂げられたのも、天地万物を支配し、保持する神を知ればこそでしょう。物事を行き詰まりではなく、プロセス、移り変わりとしてとらえて行く。つまり変革の機会であるとみなして、新しい転換を求めて行く。神を信じているのであるならば、そのようなしたたかさを持って生きたいものです。難局を乗り越えさせてくださる神を覚え、ただその場しのぎで生きる以上の歩みをさせていただきたいものです。では今日もよき一日となるように祈ります。

<クイズコーナー>
最初に、昨日のクイズです。「エジプトでイスラエル人が住んだ土地、ゴシェンの地は、別名何と呼ばれているでしょうか?」答えは、ラメセスの地でした(47:11)。では、今日の聖書クイズを一つ、聖書の歴史の中で、牧畜が本格的になったのは、誰の時代からでしょうか?答えはまた明日。では、今日もよき一日となるように祈ります。

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