ヘブル人への手紙12章

教会は、形態的に、「目に見える地上の教会」と「目に見えない霊的な教会」があると言われる。二子玉川にある玉川キリスト教会は、目に見える地上の教会であるが、その教会は、これまでのプロテスタントキリスト教会の歴史の中で信仰に生きた証を立ててきた聖徒たち、いわゆる目に見えない霊的な教会につながっているのだ。そのように、聖書の時代に生きた人々を初めとし、多くの歴史的な聖徒たちの霊的な遺産を継承する流れの中にあるのだとすれば、私たちも同じように、信仰的な歩みを進めていこうではないか、ということになる。

つまり、1節、捨て去るべきものは捨てて、進むべきところは忍耐をもって進んでいくことである。「重荷」は、まつわりつく罪とは別者であるが、私たちの信仰の成長を妨げるものである。そのような重荷は捨て去らねばならない(ピリピ3:8-10)。まつわりつく罪も捨て去っていく。それは、競技者が、常に自己ベストを目指すために必要なことである。他方、積極的に、前へ前へと進んでいくことである。そのためには、忍耐も必要だろう。だめだ、自分には気力も失せたと思わされる時にこそ、主の約束を覚えて、主の助けによって進むことである。ほんのちょっとの忍耐を働かせて、あと少しと、神の約束に近づくように粘っていくことなのだろう。神のみことばに信頼を寄せて、信仰の歩みを淡々と進めていく。人のことばや挫折や失敗に一々落胆しないことだ。しばしば失敗すると、意気消沈、へたりこんでしまう人もいるだろう。誰もが窮した状況で一発奮起できるわけではない。しかし、自分がへたり込み型の人間だと思う人は、主にあって自分を変える努力をしなくてはいけない。そのためには、多くの証人を思い起こすことだろう。牢獄に閉じ込められたような希望を失うことがあれば、ヨセフの物語を読むべきであろうし、自分には負いきれない荷を担っている、と思うようなことがあれば、モーセの物語を読むべきであろうし、激しい憎しみと敵意の目にさらされている、と思うようなことがあれば、ダビデの物語を読むべきである。またとにかく待つことを求められているのであればアブラハムの物語を読むべきである。雲のように取り巻き、信仰の生涯を生き抜いた証人たちの物語の中に、忍耐と励ましを得ることが大切だ。

しかしさらによいことは、2節、信仰の創始者であり完成者であるイエスに目を注ぎ、離さないことだ。ペテロはイエスから目をそらした時に、足が湖に沈みかけて、恐怖を味わったが(マタイ14:22-33)、その教訓に学ぶことである。私たちがイエスと共にあるならば、イエスが必要な助けを与えてくださるだろう。

そして、まだまだ自分の苦労など、キリストの苦しみに比べたら微々たるものだと心得ることだ。訓練と思って、耐え忍びながら、前へ前へと進む努力をすることである。そのように、主にあって十分訓練されることを学んだ人は、同時に、自分の魂をやわらげ、鎮めることができるように鍛えられていく。これは大きな祝福である。人間何が幸いか、この世に生きている限り悩みは尽きないし、試練もなくならない。しかし、主にあって強くされた心を持つことだろう。どんな試練も、悩みも苦しみも、和らいだ魂、落ち着いた心で受け止めて、乗り越えていける強さは、信仰の鍛錬の賜物である。

だから大いに信仰的なチャレンジに臨んでいく者でありたい。「弱った手と衰えた膝をまっすぐにし」そして、全ての人と平和を追い求め、聖さを求めることだ。ただ注意しよう、ここでいう聖さは、エサウの例が挙げられているように、俗悪さ、つまり霊的な価値に対する無感覚さである。一杯の食物との引き換えに、長子の権利を売ってしまうような、霊的なものへの感覚の鈍さ、無関心にある。やはり霊的な事柄への関心の深さが、信仰の歩みの粘り強さや、めざし行く高さにつながるのである。

そこで最後に、私たちがどこに向かっているのかを改めて考えてみよう。私たちが日々近づいているのは、神が用意してくださる大祝会である(22節)。私たちは恵みと祝福の経験に近づいているのだ。「手でさわれる山、燃える火、黒雲、暗闇、あらし、ラッパの響き、ことばのとどろきに」ではない。アブラハムが目指したものと同じ、「シオンの山、生ける神の都、天にあるエルサレム、無数の御使いたちの大祝会に近づいている」(22節)。私たちは御国の民として、迎えられる日に確実に近づいている。そこは死もなく、悲しみ、叫び、苦しみもない場所である(黙示録21:3)。シナイでの揺らぎは恐怖を与えるものであった。しかし、今私たち自身が揺るがされることがあるとしても、それは、神の祝福へ近づいているに他ならない。私たちは信仰の鍛錬の中に置かれているだけのことである。慌てずに、いつでも神にすべてをゆだね、毅然として歩ませていただこう。そして、敬虔と恐れをもって、神に喜ばれる礼拝をささげていこうではないか。

 

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