使徒の働き4章

ペテロとヨハネが捕らえられた。翌日彼らは、民の指導者、長老、学者によって構成される、サンヘドリン70人議会の場に引き出された。この議会は、数カ月前に、イエスキリストを死刑に定めた組織である。サンヘドリンには、ユダヤ人の信仰を守るために、ユダヤの社会に現れた新しい教師と教えを調べる権利があった。そこで、ペテロとヨハネが捕らえられ、尋問にかけられたのである(7節)。

ペテロは三つの点において弁明する。まず、生まれつき足のきかない男が癒されたのは、キリストの御名による奇跡であるという(8-10節)。次に、ペテロは、詩篇118:22を引用し、キリストが神であることを明言した(11節)。最後にイエスは、救い主であったとする(12節)。ペテロは、この弁明を聖霊に助けられてしていることに注意したい。かつては、イエスとの関係を否定したペテロであったが、今や、男の癒しはイエスの御名によるものであり、イエスは神であり(11節)、救い主である(12節)と断言してはばからない。神に立ち帰ったペテロの姿がそこにある。

議会は困り果てた。生まれつき足のきかない男が癒されたという動かしようのない事実と、既に死んでしまった男、イエスの権威と力を大胆に語ってはばからないヨハネとペテロに対処するすべを失ってしまった(13-14節)。それはただ単に、無学で無骨な漁師の妄想に口を閉ざしたわけではない。彼らが旧約聖書を巧みに引用し、イエスを語る背後に、イエスの臨在を認めずにはいられなかったからである(13節)。私たちも、聖霊の助けがあるなら、彼らと同じように、大胆にイエスにある救いを証しすることができる。すべての人は彼らと同じように、大胆にイエスキリストの御名を語ることができる。

さて、ペテロの弁明の結果、議会は、イエスの御名を語ることを禁じていく。彼らは、イエス同様、ペテロとヨハネも葬り去りたかったに違いないが、それは難しい相談であった。当時、熱心なユダヤの宗教家は、6000人と言われる。既に、イエスを信じる者は5000人、その存在を無視して、闇に葬りさるには、あまりにも急速に弟子たちの数は増え広がっていた。さらにイエスの死後、急速に成長し、あらゆる不思議な業を行い、イエスの復活を大胆に証明するキリスト者たちに、エルサレム中の人々が関心を示していた。だから議会にできることは、これ以上イエスの名によって語ってはならないと禁じ、脅すだけだったのだ。しかし、ペテロは脅かしに動じることなく、再び大胆に語りはじめる(15-20)。ペテロは言う。「神の前に正しいかどうか、判断してください」(19節)自分にとって正しいかどうかではない。皆もしているかどうかでもない。神の前に正しいかどうかである。

ペテロとヨハネが釈放された。二人の証を聞いた弟子たちは心を一つにして、彼らもまた同じようにみことばを大胆に語ることができるように、と祈っている(29節)。ペテロとヨハネが無学な普通の人であるならば、他の弟子たちにも同じように、主の恵みは現されるだろう。彼らは、敢えて同じ恵みを祈ったのである(30節)。彼らの祈りの特徴をいくつか見ておこう。

まず彼らは、全ての支配者なる天地創造の神を呼んでいる。それは詩篇2編の冒頭の章節の引用であるが、祈りの対象を明確に意識して祈っている。祈りを聞かれる方は、天地万物の造り主であり(24b)、予め預言者たちによって語られたイエスの十字架による救いのご計画を成し遂げられたお方である(25-28節)。その神のみこころは、主のしもべたちが、その事実を認め、脅かしの中にあっても、時が良くても悪くても、主の栄光を大胆に証しし続けることである(28-29節)。そのみこころを遂行することができるように、とまさに彼らは神のみこころを行うことの助けを求めて祈ったのである。彼らは、迫害の状況が変えられることや、自分たちが宗教的に優位に立つことを祈り求めたわけではない。無いものねだりをするのでもなく、ただ、神が自分たちに期待していることを成し遂げられるように、今与えられているものを100%も200%も用いて、神の素晴らしさが現されるように祈った。神がその祈りに応えられたのは言うまでもない(31節)。彼らがこのように祈った時、その集まっていた場所が震い動き、一同が聖霊に満たされた。

私たちが彼らの祈りに学ぶとしたら、やはり、神の御心を行うように祈り、神の御業が、彼ら同様に等しく現されることを祈ることだろう。祈祷会は、単なる教会の行事ではない。祈祷会によって主の御業は前進し、教会が建てられるのである。祈祷会によってこそキリスト者は聖霊の力に満たされ、再び宣教の業へと押し出されるのである。「全てのことが神の肩にかかっているかのように祈り、全てのことが人の肩にかかっているかのように働きなさい」と語ったのはアウグスティヌスである。集まって祈りあい、イエスを証しする者たちとならせていただこう。

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