出エジプト記1章

1.出エジプトの年代(1:1-11)
今日から出エジプト記を見ていきます。ヨセフの家族がエジプトに移住して後、多くの月日がたち、エジプトにはヨセフを知らない王が現れました。いったいそれはいつ頃で、誰なのか。古代エジプト史は、古王国、中王国、新王国と三つの時代に分けて考えるのが通例で、馴染み深いピラミッドやスフィンクスの像は古王国、BC2700年頃のエジプト全盛時代のものです。おそらくヨセフが大臣となった時代は、その後のBC1500年頃、中王国の時代とされています。ですからモーセに導かれた出エジプトの出来事は、さらに後のことになります。
そこで、大きく二つの学説があります。一つは出エジプトを、BC 1450 年頃のアメン・ホテプ二世の時代とするもの、そしてもう一つは、BC1200年頃のラメセス二世の時代であるとするものです。旧約聖書の列王記第一には、イスラエル人がエジプトの地を出てから480年目にソロモンが主の家の建設に取り掛かったと書かれています。ソロモンが神殿建設を開始したのは、BC 967年です。そこで聖書に書かれたとおりに計算して、480年遡ると、BC1450年頃のアメン・ホテプ二世の時代と考えられるわけです。しかし考古学的に検証すると、その時代にはまだエジプトのピトムにはそういう町は立っていなかったと考えられています。ピトムに町が建てられたのは、さらに後の時代で、おおよそBC1200年頃のラメセス二世の時代となります。聖書の記述と考古学的な見解では、異なった結論になって、二つの学説があるというわけです。ともあれ、おおよそBC1200年から1450年の間、つまり新王国の時代に、この出エジプト記に書かれた出来事があったと考えておきましょう。エジプトと言えば、ピラミッドやスフィンクスのイメージが思い浮かびますが、出エジプトの出来事は、あの時代よりもさらに1000年ほど新しい、そういう時代の出来事でした。
2.ファラオの対イスラエル人政策(1:12-22)
さてこの新しい王は、イスラエル人が増え広がり、強くなっていることを知り、これを労働力として用い、さらにこの国を出ていくことがないように、彼らをコントロールできる程度の人口に抑制しようとしました。そのため、東部デルタ地区に、倉庫の町を建設し、レンガ作り、運河掘り、潅漑事業等の強制労働を課していくのです。ところが、イスラエル人は弱くなるどころか、益々増え広がってしまうのです。そこでエジプトの王は、男子のイスラエル人が産まれたなら、即座に殺すことを命じます。しかし神を畏れる二人の助産師、シフラとプアの知恵ある抵抗によって、子どもたちの命は守られていくのです。シフラとプアにとっては、目に見えるエジプトの支配者よりも、目に見えない天地万物の支配者である神の方が恐れるべき存在であったわけです。人は目に見える権威を恐れやすいものです。人が命をかけた行動に出るのは、目に見えない世のどの権威にも優る神の権威を覚えればこそでしょう(箴言29:25,26)。
エジプトの王は、助産師たちを使ってイスラエルの人口を抑制できないと知ると、最終手段を講じました。つまりイスラエル人に生まれた男子は皆ナイル川に投げ込むように命じるのです(22節)。
 かつて神はアブラハムに、彼の子孫が苦しむことをあらかじめ預言されました(創世記15:13-14)。エジプトの王は、イスラエル人の功績によってエジプトが守られてきた歴史を忘れたのみならず、自分たちの身を案じて、イスラエル人を自分たちの都合のよいように利用しようとしました。しかしそのような人間の横暴がいつまでも続くわけではありません。出エジプトは、常識的には考えられない方法で、神が助けを与え、苦境からイスラエル人を脱出させた物語です。神の力強い御手が働く時に、これを阻止することができる者はいないのです。助産師たちにしても、ただ、彼らは正義感をもって悪に対抗した、というわけではありません。神が、助産師の勇気ある行動を守り、祝されたのです。この世の支配に勝る神の支配があることを覚えて、人として正しい道を歩ませていただきたいものです。では今日もよき一日となるように祈ります。

<クイズコーナー>
最初に、昨日のクイズです。「アブラハムが購入した畑地は、マクペラ、ではヤコブが購入した畑地はどこであったでしょうか?」答えは、シェケムでした。アブラハムは、ツォハルの子エフロンの畑地にあるマクペラの畑地と洞穴を購入(創世記23:20)、ヤコブは、シェケムの父ハモルの子からシェケム町の野の一角を買い取りました(創世記33:19)。後に、新約聖書で、ステパノは、説教の中で、これを一緒にして、アブラハムがシェケムを購入したとしています(使徒7:16)。では、今日の聖書クイズを一つ。モーセ五書と呼ばれる、旧約聖書の最初の5つの書物の内、俗にモーセの説教集と呼ばれるのは、どの書でしょうか。答えはまた明日。では、今日もよき一日となるように祈ります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です