コリント人への手紙第二7章

1節、「このような約束」は、6:16-18で語られたことを受けている。つまり神が私たちを選び、私たちの父となり、私たちはその子どもとされたことだ。そのような特別な愛顧の関係に置かれるのだから、いよいよ主に忠義を果たし、聖潔への道を歩もうではないか、となる。つまりこれは、6:16-18のまとめである。

2節では、6:13の話に再び戻っている。つまりパウロは、コリントの教会の人々に、もう一度心を開くように求めているのだ。そして、さらに、自分がコリント教会の問題と向かい合った時のことを書いた2:13の話へと戻っている。パウロは、この時トロアスという町にいた。すでにパウロは、コリント教会との関係を改善するために、直接コリントに赴いたばかりであった。話せばわかると思いきや、事態は、いっそう悪くなり、最悪の事態を迎えていたのであった。パウロはひどく悲しみ、もう二度と同じような訪問はしまいと思ったほどだった(2:1)。しかしパウロは諦めない。執念深い男である。パウロは俗に「涙の手紙」と呼ばれる手紙を書き(2:4)、テトスにそれを持たせて送り出している。そしてパウロは、首を長くしてテトスの帰りを待ち、ついに待ちきれなくなり、自らテトスに会うため、マケドニヤへ向かったのである(2:13)。パウロはその時の心境から続ける(7:5)。

マケドニヤに到着した時に、「外には戦い、内には恐れがあった」と。「戦い」は、たいてい口論や論争の意味である、とされる。つまり、そこで敵対者との激しい論争があったのかもしれない。「恐れ」は、彼が涙ながらに手紙を書いたのに、何ら進展がなかった場合、どうしたらよいのか、という霊的喪失感を抱いていたということなのかもしれない。正確な意味は、わからないが、この時の彼に平安がなかったことは確かだ。彼は「気落ちしていた」。

しかし、そこにテトスが朗報をもたらしたのである。コリント教会に悔改めが起こり、期待どおりに教会の歩みが正され、パウロとの和解ムードが生じ、万事がうまく好転した、と。そこでパウロは、喜びに満ちてこの手紙を書いている(7節)。

普通であったら諦めるところを、パウロは諦めなかった。角が立とうが、何としても理解してもらおうと務めた。そもそも牧会は子育てと同じである。子育てに遠慮も、諦めもない。親に、子どもを落胆させたり、打ちのめしたりする気持ちなどあろうはずがなく、むしろ、言い方は色々あっても、彼らを引き上げ、激励し、成長させる願いが強く、そうであればこそ言葉を尽くして、生き方、考え方について、わからせていこうとするものだ。子どもと親は「共に死に共に生きる」運命共同体なのである(3節)。だからどんなに多大なエネルギーを注ぐことがあろうとも、放ってはおけないのである。放っておいているように見えても、いつでも介入できる時があることを覚えながら、気にかけているところがあるものだ。しかしエネルギーを消耗するのは、育てる側だけのことではない。育てられる方もそうだろう。パウロは、コリントの教会の人たちが、問題をうやむやにしたり、適当に交わしたりせずに、真摯に受け止め、聖書的な解決へと努力したことを評価している(9-11節)。

だからそれは、単なる仲直りではなかった。パウロはコリントの人たちは、神のみ言葉に照らして、悲しむべきことを悲しみ、悔い改めるべきことを悔い改めて一致したのである。ここを勘違いしてはいけない。神のみこころに沿った悲しみと世の悲しみの違いがある。世の悲しみは、罪を犯した時に、罪がばれてしまったことの悲しみ、あるいは、罰せられたことに感情を害する悲しみである。しかし、神のみこころに添った悲しみは、そうではない。神の御言葉に照らして、神のみこころにそぐわぬ行為そのものを悲しむ悲しみである。そして自らを主の力によって変えていただくことを切に願う悲しみである。このように神のことばをお互いに受け止める一致があってこそ、本当の意味での信頼関係が回復していく。もちろん、こうした信頼の回復は、牧師一人の努力でできることではない。パウロの場合も、パウロと一緒になって行動するテトスという助け人がいた。教会には牧師と心を合わせて働いていく人々が必要とされている。

パウロの喜びは四重である。まずそれは和解の喜びであった(7節)。そして、和解に留まらない、コリント教会の人々の霊的な熱心さが引き起こされた喜びであった(12節)。そして、コリント教会の人々の、テトスに対する温かいもてなしへの喜びであった(15節)。それはコリント教会の人々の霊的熱心さの回復が本物であったことを感じさせるものであった。そして最後に、コリント教会の人々を、パウロ自身が信頼できる喜びであった。真の喜びは、主がもたらしてくださるものであり、それゆえに、主の素晴らしさを思うのである。

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