申命記16章 主の過ぎ越しを祝いなさい

申命記16章 三つの祭りを守る

古代イスラエルには、二種類の暦がありました。一つは、春に始まり春に終わる暦。もう一つは、果実の収穫を祝う秋の収穫祭(出エジプト23:16.34:22)に始まり、秋に終わるものです。しばしば旧約聖書の中では、両方の暦が混在する形になっているので、聖書を読んでいるとよくわからなくなることがあります。例えばレビ記25:8-10には、ヨベルの年は「第7月」に始まるとあります。ヨベルの年をこの時から始めるのは、明らかに秋を新年とする数え方です。ところが、それを「第1月」と言わず、「第7月」と呼ぶそのその言い方は、春を新年とする数え方のせいです。おそらく一つは日常生活で使われる暦で、もう一つは宗教的、農事的な暦であったと考えられています。旧約聖書の祭に関して春を新年とする数え方で語られていても、一般の出来事は、秋を新年とする数え方で語られることがあります。

そこで1節「アビブの月」とありますが、これは、カナン人の土着暦による古い呼び名です。後のバビロン捕囚の時代には、バビロン暦でニサンの月と呼ばれるので、申命記はバビロン捕囚以前、つまり古い時代に書かれたものとされる点です。この月は、太陽暦では、3~4月に当たりますが、バビロン捕囚後、イスラエルの暦でも第一月とされるようになりました。この月の中旬に、出エジプトを記念する過ぎ越しの祭りが守られるのです。ちょうどそれは春ですから、レバノン山の雪解けの水でヨルダン川が増水し、エリコやヨルダンの平原では、大麦の収穫が始まり、小麦は穂が出る、いわば収穫開始期です。それに伴い三つの祭りがお祝いされました。

1.過ぎ越しの祭(1-8節)

まず、過ぎ越しの祭りです。背景には、土着の農耕祭りの影響があると考えられていますが、イスラエル人は、これをエジプトから解放されたことを祝う目的で行いました。ですから、彼らは「悩みのパン」を食べながら、自分たちがパン種を入れてパンを作る間もなく、急いでエジプトを出た、その時の出来事を思い出す工夫を、その祭りに込めたのです(出エジプト12:34)。

2.七週の祭(9-12節)

次に9節、七週の祭。これは「鎌を立穂に入れ始めるときから七週間」後に祝われるものです。「刈り入れの祭」(出エジプト23:16)「初穂の日」(民数28:26)とも呼ばれましたが、それは、純粋に神が豊かな収穫を与えてくださったことを喜ぶ祭りでした。後の新約時代には、ペンテコステの祭りと呼ばれ、物質的な収穫を喜ぶ機会から、霊的な神の臨在の恵みを喜ぶ機会とされています。

3.仮庵の祭(13-15節)

第三に13節「仮庵の祭」(13-17節)。これも一般社会の秋の収穫祭の影響で、夏の終わりに持たれるものだったと考えられています。しかし、イスラエル人はこれもまた、荒野の40年間、神の恵みに支えられた仮住まいの日々を思い起こすためのもの、と新しい意義づけをしたのです(レビ23:40)。そしてそれを次の世代に知らせることを使命としました(レビ23:40)。40年の荒野の生活は確かに不自由な苦難の日々の連続でしたが、それは神の愛と誠実さを具体的に身に染みて味わう機会でもあったのです。後にイエスはこの祭りのフィナーレで、神の霊的な祝福の豊かさに人々の目を向けるように語り掛けています(ヨハネ7:37)。確かに人は、モノだけでは満足できず、目に見えない神の豊かな心の祝福を必要とするのです。

4.祭りを守る補足規程(18-22)

最後の18節からは、これらの祭が正しく守られるための補足です。町々に、さばき人とつかさたちを任命し、わいろを取らず、真実をもって事に当たらねばならないと定めています。祭りのような行事にありがちな不正を監視し、あれば是正する必要があったのです(18-20節)。またアシェラ像のような偶像も警戒されなくてはなりませんでした。イスラエルの新しい意味づけのなされた祭りが、異教の祭と混同されたり、混合されることのないように教えられたのです。

約束の地に入るにあたり、イスラエルの民が教えられたことは、物事を忘れやすい人間が、どのようにして大切なことを守っていくか、その工夫でした。人は、大切な記念日を定め、一種の儀式的行事を行うものでしょう。本当に、よき工夫をもって、忘れてはならない物を大事にしたいものです。では今日もよき一日となるように祈ります。

 

<クイズコーナー>

最初に、昨日のクイズです。安息の年を7度重ねた年の翌年、つまり50年目の年は何と呼ばれたでしょうか?答えは、ヨベルの年(レビ記25:8-10)でした。では今日の聖書クイズを一つ、神が人に、ご自分を恐れ、全ての命令を守ることを望まれた理由はなんでしょうか?答えはまた明日。では今日もよき一日となるように祈ります。

 

<天草さんのフォローアップ>

パスターまことの聖書通読一日一章をフォローし、さらに掘り下げにチャレンジしている、天草さんのサイトはこちら⇒「天草幸四郎」http://progress-to.jugem.jp/

私の願いは、聖書が国民の愛読書になることです!

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です